3つの集合A、B、C、の共通部分の要素の個数
n(A∩B∩C)は次の公式で求まります。
\( n( \mathrm{A} \cap \mathrm{B} \cap \mathrm{C} ) = n(\mathrm{A} ) + n(\mathrm{B}) + n(\mathrm{C}) \)
$$ -n(\mathrm{A} \cup \mathrm{B} ) -n(\mathrm{B} \cup \mathrm{C} ) -n(\mathrm{C} \cup \mathrm{A} ) + n(\mathrm{A} \cup \mathrm{B} \cup \mathrm{C}) $$
ここでn(A)は集合Aの要素の個数を表す記号です。
この公式は直接、集合の共通部分の要素の個数を
数えるのが難しいとき
代わりに和集合の要素の個数を
数えれば良いことを意味していて
例えばくじ引きにおいては、
多種類の景品を同時に当てる確率の計算に使えます。
証明した後、応用例を見て
3つの集合から発展させて、
一般のn個の集合の場合にも触れたいと思います。
証明の方法
証明には命題の対と言える、次の公式を利用します。
$$ n( \mathrm{A} \cup \mathrm{B} \cup \mathrm{C} ) = n(\mathrm{A} ) + n(\mathrm{B}) + n(\mathrm{C}) \hspace{20cm}$$
$$ -n(\mathrm{A} \cap \mathrm{B} ) -n(\mathrm{B} \cap \mathrm{C} ) -n(\mathrm{C} \cap \mathrm{A} ) + n(\mathrm{A} \cap \mathrm{B} \cap \mathrm{C}) $$
命題とは丁度、∩、∪、を入れ換えた関係になっていて、
こちらも正しい式です。
こちらは反対に、和集合の要素の個数を
数えるのが難しいとき便利です。
証明は、とても直感的で
具体的には以下の記事で勉強できます。
簡単に説明すると
始めに、とりあえず集合ABCを足し合わせてみて、
重複して数えてしまった部分を
順次調整して行っているイメージです。
命題の証明
利用する公式の一番右にn(A∩B∩C)があるので、
それについて解く形で証明して行きます。
公式より
$$ n(\mathrm{A} \cap \mathrm{B} \cap \mathrm{C}) = -n(\mathrm{A} ) -n(\mathrm{B}) -n(\mathrm{C}) \hspace{20cm}$$
$$+n(\mathrm{A} \cap \mathrm{B} ) +n(\mathrm{B} \cap \mathrm{C} ) +n(\mathrm{C} \cap \mathrm{A} ) +n( \mathrm{A} \cup \mathrm{B} \cup \mathrm{C} ) $$
ここで2つの集合の共通部分の要素の個数の公式
$$ n(\mathrm{A} \cap \mathrm{B}) = n(\mathrm{A}) +n(\mathrm{B}) -n(\mathrm{A} \cup \mathrm{B} ) \hspace{20cm}$$
を認めると右辺の第4~6項は
$$ \quad n(\mathrm{A} \cap \mathrm{B} ) +n(\mathrm{B} \cap \mathrm{C} ) +n(\mathrm{C} \cap \mathrm{A} ) \hspace{20cm}$$
\(=2 \{n(\mathrm{A}) +n(\mathrm{B}) +n(\mathrm{C}) \} \)
$$ -n(\mathrm{A} \cup \mathrm{B}) -n(\mathrm{B} \cup \mathrm{C}) -n(\mathrm{C} \cup \mathrm{A}) $$
のように書き換えられるので、
代入して
$$ n( \mathrm{A} \cap \mathrm{B} \cap \mathrm{C} ) = n(\mathrm{A} ) + n(\mathrm{B}) + n(\mathrm{C}) \hspace{20cm}$$
$$ -n(\mathrm{A} \cup \mathrm{B} ) -n(\mathrm{B} \cup \mathrm{C} ) -n(\mathrm{C} \cup \mathrm{A} ) + n(\mathrm{A} \cup \mathrm{B} \cup \mathrm{C}) $$
を得ます。\( \square \)
応用例
共通部分の要素の個数を数える公式は、
くじ引きに使えます。
2つの集合についての例を見てみましょう。
例題
10個のくじの中に
- 景品Aは1個
- 景品Bは2個
入っていて残りは、はずれ、です。
3回くじ引きして、
景品Aと景品Bの両方を当てる確率はいくつ?
答え
樹形図より、くじの引き方の総数は10×9×8通りあります。
景品Aを当てる引き方の数は
景品Aの当たらない引き方の数(9×8×7通り)を、
くじの引き方の総数から引き算すれば求まるので
\( {}_{10} \mathrm{P}_3 -{}_9 \mathrm{P}_3 \)
通り。
同様に景品Bの当たる引き方は
\( {}_{10} \mathrm{P}_3 -{}_8 \mathrm{P}_3 \)
通り。
景品AまたはBの当たる引き方は
\( {}_{10} \mathrm{P}_3 -{}_7 \mathrm{P}_3 \quad (={}_{10} \mathrm{P}_3 -{}_{10-(1+2)} \mathrm{P}_3) \)
通り。
公式より、景品AとBの両方を当てる引き方は
\( ( {}_{10} \mathrm{P}_3 -{}_9 \mathrm{P}_3) +({}_{10} \mathrm{P}_3 -{}_8 \mathrm{P}_3) -( {}_{10} \mathrm{P}_3 -{}_7 \mathrm{P}_3) \)
通りと求まり、これを
くじの引き方の総数で割り算すれば答えの確率です。
$$ \quad \frac{ ( {}_{10} \mathrm{P}_3 -{}_9 \mathrm{P}_3) +({}_{10} \mathrm{P}_3 -{}_8 \mathrm{P}_3) -( {}_{10} \mathrm{P}_3 -{}_7 \mathrm{P}_3) } {{}_{10} \mathrm{P}_3} \hspace{20cm} $$
$$= \left( 1 -\frac{7}{10} \right) +\left( 1 -\frac{7}{15} \right) -\left( 1 -\frac{7}{24} \right) \hspace{20cm} $$
$$= \frac{3}{10} +\frac{8}{15} -\frac{17}{24} \hspace{20cm}$$
分母が大きくなり過ぎるので、
手計算はここまでにします。
最終的にくじの総数で割り算して
確率の形になるため、
始めから
(景品AとBの両方を当てる確率)=(景品Aの当たる確率)
+(景品Bの当たる確率)-(景品AまたはBの当たる確率)
のように、計算することもできます。
今回証明した命題を用いると種類を一つ増やして、
景品A、B、C、すべてを当てる確率も求まります。
公式の一般形
察しの良い人は気付いたと思いますが
4つ、5つ、6つ、…、の集合についても
同様の公式を利用できます。
すなわち
n個の集合A1、A2、…、An、の共通部分の要素の個数は
$$ \left|\bigcap_{i=1}^n A_i\right| = \sum_{k=1}^n (-1)^{k+1} \sum_{1 \leq i_1 < i_2 < \cdots < i_k \leq n} \left| A_{i_1} \cup A_{i_2} \cup \cdots \cup A_{i_k} \right| \hspace{20cm}$$
で求まります。
|A|で集合Aの要素の個数を表します。
和集合の要素の個数も
$$ \left|\bigcup_{i=1}^n A_i\right| = \sum_{k=1}^n (-1)^{k+1} \sum_{1 \leq i_1 < i_2 < \cdots < i_k \leq n} \left| A_{i_1} \cap A_{i_2} \cap \cdots \cap A_{i_k} \right| \hspace{20cm}$$
であり、これは包含と排除の原理(包除原理)と呼ばれます。
証明は、こちらの記事に載ってます。
(n=2, 3)の時の公式の観察から
一般形が見えて来るので、
数学的帰納法による証明が素直だと思います。
共通部分の要素の個数の公式は、
包含と排除の原理にド・モルガンの法則を適用して導けます。
まとめ
共通部分の要素の個数を数える公式は、
和集合の要素の個数を数える公式から証明できます。
この二つの公式は対になっていて
それぞれ、
- 和集合の要素の個数を数えやすい問題
- 共通部分の要素の個数を数えやすい問題
に向いてます。
今回は3つの集合について示しました。
一般にn個の集合についても同様の結果を得られ、
その際は、数学的帰納法を用います。