べき関数y=xaの微分はaxa-1で
微分可能だから連続、
という事を知っている人は多いと思います。
難しいのは証明の道筋で
- 整数乗のべき関数の微分
- 有理数乗のべき関数の連続性
- 実数乗の指数法則
- 指数関数・対数関数の微分
- 実数乗のべき関数の微分
この順番で示さないと
循環論法に陥ってしまいます。
良くある罠としては、
対数微分法を用いて
有理数乗のべき関数の微分は求まりますが
連続性は示されません。
根拠と結論を明白にしつつ
べき関数の連続性と導関数を証明して行きます。
べき関数の連続性と微分
自然数乗のべき関数
自然数nについて
べき関数y=xnは実数全体で定義され、
導関数
\( (x^n)' = n x^{n-1} \)
を持つ。
証明
二項定理より
\( (x+h)^n = x^n +n x^{n-1} h + {}_n \mathrm{C}_2 x^{n-2} h^2 +\)
\(\quad\quad\quad\quad\quad\quad\quad\quad\quad\; \cdots + {}_n \mathrm{C}_{n-2} x^2 h^{n-2} +n x h^{n-1} +h^n \)
なので
$$\quad \lim_{h \to 0} \frac{(x+h)^n -x^n }{h} \hspace{20cm} $$
$$= \lim_{h \to 0} \frac{n x^{n-1} h + {}_n \mathrm{C}_2 x^{n-2} h^2 + \cdots + n x h^{n-1} +h^n}{h} \hspace{20cm}$$
$$ = \lim_{h \to 0} ( n x^{n-1} + {}_n \mathrm{C}_2 x^{n-2} h + \cdots +n x h^{n-2} +h^{n-1} )\hspace{20cm}$$
\( =n x^{n-1} \quad \square\)
0乗のべき関数
y=x0は常に1の定数関数である。
導関数
\( (x^0)' = (1)' = 0 \)
を持つ。
負の数乗のべき関数
自然数nについて
べき関数
$$ x^{-n} = \frac{1}{x^n} \hspace{20cm}$$
はx≠0において定義され、
導関数
\( (x^{-n})' = -n x^{-n-1} \)
を持つ。
証明
商の導関数の公式
g(x)が微分可能なら
$$ \left( \frac{1}{g(x)} \right)' = - \frac{g'(x) }{g^2 (x) } \hspace{20cm} $$
である。
ただしg(x)=0となる点は除く。
を用いる。
xnは微分可能かつ導関数はnxn-1、
$$\left(\frac{1}{x^n} \right)' = -\frac{(x^n)' }{(x^n)^2 } \hspace{20cm} $$
$$\quad\quad\quad\;\,= -\frac{n x^{n-1}}{x^{2n} } = -n\frac{1}{x^{n+1} } = -n x^{-n-1} \quad \square \hspace{20cm} $$
有理数乗のべき関数連続性
微分可能ならば連続なので
整数乗のべき関数は連続です。
逆関数と合成関数の連続性を利用して、
有理数乗のべき関数の連続性を示します。
逆関数の連続性
連続関数f(x)は閉区間[a, b]において狭義単調増加
すなわち任意の閉区間の2点x、yについて
\( x<y \Rightarrow f(x) < f(y) \)
を満たすとする。
この時、閉区間[f(a), f(b)]上で
f(x)の逆関数f-1(x)が定まり
f-1(x)もまた連続かつ狭義単調増加である。
狭義単調減少な場合も同様に成り立つ。
x≧0において
y=xnは狭義単調増加な連続関数、
逆関数x1/nもx≧0で連続。
x>0において
y=x-nは狭義単調減少な連続関数、
逆関数x-1/nもx>0で連続。
合成関数の連続性
関数f(x)はx=aで連続、g(y)はy=f(a)で連続な時
合成関数g(f(x))はx=aで連続である。
正の有理数乗のべき関数
べき関数x1/nはx≧0、
xmは実数全体で連続性を持つ。
合成関数
\( y = (x^{1/n})^m = x^{m/n} \)
はx≧0において連続。
負の有理数乗のべき関数
べき関数x-1/nはx>0、
xmは実数全体で連続性を持つ。
合成関数
\( y = (x^{-1/n})^m = x^{-m/n} \)
はx>0において連続。
指数法則へ
実数乗のべき関数を微分するには
指数関数、対数関数の力を借りる必要あります。
始めに、
有理数乗のべき関数の連続性を用いて
実数乗の指数法則を示します。
指数関数と対数関数
実数乗の指数法則が使えると
対数関数の公式
- \( \log AB = \log A +\log B \)
- $$ \log \frac{A}{B} = \log A -\log B \hspace{20cm}$$
- \( \log A^t = t \log A \)
が求まります。
この公式で
指数関数と対数関数の導関数は計算され、
それぞれ
$$\left\{ \begin{eqnarray} (e^x)' &=& e^x \\ ( \log x)' &=& \frac{1}{x} \end{eqnarray} \right. \hspace{20cm}$$
です。
実数乗のべき関数
最後に合成関数の微分を利用して
実数乗のべき関数の微分を求めます。
合成関数の微分
y=f(x)は区間I上で微分可能、
z=g(y)は区間J上で微分可能かつf(I)⊂Jとする。
この時、合成関数z=g(f(x))はI上で微分可能
$$ \frac{d}{dx} g(f(x) ) = g'(f(x) ) f'(x) \hspace{20cm}$$
が成り立つ。
定理
任意の実数aについて
べき関数y=xaはx>0において定義され、
導関数
\( (x^a)' = a x^{a-1} \)
を持つ。
証明
べき関数を
$$ x^a = e^{\log x^a } =e^{a \log x} \hspace{20cm}$$
の様にy=a log(x)とz=eyの合成関数として見る。
x>0を区間Iにとれば公式の仮定を満たす。
$$(x^a)'= e^{a \log x} (a \log x )' \hspace{20cm}$$
$$\quad\quad\;= e^{ \log x^a} a \times \frac{1}{x} = x^a \times a \times \frac{1}{x} = a x^{a-1} \quad \square \hspace{20cm} $$
まとめ
二項定理、商の導関数、逆関数、合成関数
指数に合わせて道具を用意しました。
最後の実数乗の場合は主に、
合成関数の微分の応用にあたる
対数微分法が利用されます。
今回は証明の正しさを確認しやすい様
そのまま、
指数関数と対数関数の
合成関数と見て計算しました。