指数関数と対数関数は
高校で習う関数の中では一番難しく、
「こんなの勉強して何の役に立つんだ…」
と思った人も多いはず。
実は私たちの生活の身近な所から
果ては高度に科学的な話まで
この関数で説明できる
現象は色々と見つかります。
イラストを取り入れつつ、
どんな例があるか
紹介して行きたいと思います。
指数関数の身近な例
ねずみ算
子供を産んで
一匹のねずみが
二匹に増えて行くとするなら、
ねずみの数は指数関数
\( y = 2^x \)
により計算されます。
ねずみに限らず
人間であれば未来の人口予測、
医療においては
細菌の繁殖のスピードを求めて
処置が間に合うかの判断に利用されます。
金利
年利10%の銀行にお金を預けておくと、
x年後には
\( y = 1.1^x \)
倍になります。
雪だるま式に増えるので
始めは少なくても
段々と大きくなって来ます。
音階
音楽の”ドレミファソラシド”は
ラ(440Hz)を基準音にして、
- 右に半音ずれるごとに21/12倍
- 左に半音ずれるごとに1/21/12倍
の高さの音で作られています。
ラから右へx半音ずれた音は
\( y =440 \times (2^{1/12})^x \)
左へx半音ずれた音は
$$ y =440 \times \left( \frac{1}{2^{1/12}} \right)^x $$
をそれぞれ周波数に持ちます。
ちなみに1オクターヴは12半音、
12半音先では
\( (2^{1/12})^{12} = 2^{12/12} = 2^1 = 2 \)
より確かに音の高さが2倍になっています。
減って行く場合
りんごを半分に切り続けると
1/2、1/4、1/8の様に小さくなります。
$$ y = \left( \frac{1}{2} \right)^x$$
折り紙を半分に折りつづける工程など
始めは勢いよく
次第に少しずつ0に近付く現象です。
放射性物質の半減期
考古学に応用されていて
遺物の年代測定に利用されます。
炭素14という放射性物質の
半減期は5730年で、
t年後には元の
$$ y = \left( \frac{1}{2} \right)^{t/5730} $$
倍にまで減ります。
発掘された動物や植物の体内の
炭素14の量を調べる事で
何年前の物かを逆算できます。
光の減衰
光が水やガラス等の媒質中を進むと
距離に応じて明るさが失われます。
地点Aでの光の強さをFA
距離x進んだ
地点Bでの光の強さをFB
媒質と波長より決まる定数をαとし
ランベルト・ベールの法則
\( F_B = F_A \times e^{-\alpha x } \)
が成り立ちます。
冷める速さ
温かいお茶をカップに注ぐと
始めは周囲の空気に一気に冷まされ、
次第に温度の変化がゆっくりになります。
- Tt:時刻tのお茶の温度
- Tm:気温
- T0:お茶の始めの温度
- r:カップの形状等で決まる定数
として
ニュートンの冷却法則
\( T_t = T_m +(T_0 -T_m)e^{-rt} \)
が成り立ちます。
発展
指数関数は自然現象に多く見られ、
方程式を解く際に用いられます。
統計学においても
分布の基本となる大事な物です。
対数関数の身近な例
指数関数と対数関数の間には
xとyを入れ換えると
底は同じまま、
もう片方のグラフになる関係があります。
対数関数は先に行くほど平たく、
徐々に鈍感になる現象に用いられます。
味覚
例えば人間の味覚は
調味料の多さに応じて鈍感になります。
唐辛子を一振りより
さらに辛くしたい場合は、
二振り必要です。
もっと辛くするなら
次は4振りくらい要ります。
8振り、16振り、…
の様に必要量が倍々に増えます。
辛さの具合yは、
唐辛子の量xについて
\( y = \log_2 x \)
と書けます。
ヴェーバー-フェヒナーの法則
この人間の感覚が
対数関数に従う性質は
ヴェーバー-フェヒナーの法則と呼ばれます。
古い実験で、
100gの重りを持っている時に10g増えるのと
200gの重りを持っている時に10g増えるのとでは
感じ方に差がある事が起源だそうです。
対数関数と単位
法則によれば
対数は外部からの刺激量を
人間の感じる感覚量に変換してくれます。
重さも常用対数(底が10の対数関数)
に代入すれば、
持ち上げる困難さのレベルを推定できます。
x:重さ | 10g | 100g | 1000g(=1kg) | 10000g(=10kg) |
y:人間の感じ方 | レベル1 | レベル2 | レベル3 | レベル4 |
科学においても
常用対数は単位の定義に応用されます。
デシベル
音が大きくなるに従い
音量の変化を感じ取りにくくなります。
音量の単位デシベル[dB]の値は
次の式で定義されます。
$$ \mathrm{dB}=20 \log_{10} \frac{p}{p_0} \quad \left(= 10 \log_{10} \frac{p^2}{p_0 ^2} \right) \hspace{20cm}$$
- p:聞こえてる音の音圧[Pa]
- p0:人間が聞き取れる最小音圧[Pa]
マグニチュード
地震の揺れも大きくなり過ぎると
ちょっと揺れが増えても分かりません。
地震の大きさの単位マグニチュード[M]は
次の式で定義されます。
$$M = \frac{ -4.8 + \log_{10} E}{1.5} \hspace{20cm}$$
- E:地震波のエネルギー[J]
pH(ペーハー)
どれだけ水溶液が酸性かは、
液中の水素イオン[H+]のモル濃度(mol/L)
を常用対数に代入して測られます。
\( \mathrm{pH} = -\log_{10} [ \mathrm{H}^+] \)
星の明るさ
星の明るさの目安である等級は
恒星のベガを基準に定められます。
ベガを0等級として
1等級、2等級、3等級、…
数字が大きいほど暗い星です。
$$ (星の等級) = -2.5 \log_{10} \frac{l}{l_{0}} \hspace{20cm}$$
- l:星の光度[cd]
- l0:ベガの光度[cd]
等級間の明るさの比が1001/5倍
になるよう作られています。
大きな数の計算
昔の人たちは対数関数を
\( 12345678 \times 87654321 \)
と言った桁数の大きい数の
掛け算に利用してました。
対数関数の公式の
\( \log AB = \log A + \log B \)
は掛け算を対数関数の世界に持ち込むと
足し算と等しくなる事を意味していて、
複雑な掛け算の問題を
人間にとって容易な
足し算に直してから解いていました。
大航海時代、
天文学と三角関数とこの計算方法により
目的地までの針路を割り出していたそうです。
まとめ
指数関数と対数関数の例を
10個以上紹介しました。
指数関数には、
増えて行く場合と
減って行く場合の2パターンあって
各々
雪だるま式に無限大に発散する現象
次第に0へと消えてしまう現象
の計算に使われます。
対数関数は人間の感覚と深い関わりがあり、
味覚、聴覚、視覚などの
単位を作る際に必要不可欠です。
参考文献
マグニチュードの式は
私の高校時代の教科書「数学Ⅱ」に載っていた
\( \log_{10} E = 4.8 +1.5M \)
をMについて解いたものです。
↓大学生向けの記事ですが音の減衰も指数関数的です。