実用上とても大切な
底aの指数関数の値の計算方法を解説します。
公式
底aの指数関数の値は公式
$$ a^x = e^{x \ln a} = \exp [x \ln a ] \hspace{20cm}$$
a>0, x∈R
により計算されます。
ln(a)と底eの指数関数の値は
テイラー展開による近似で求まるため、
右辺を計算してaxの値を得ます。
詳しい解説
上式は指数関数の底の変換公式を利用しています。
指数関数の底の変換公式
$$ a^x = b^{\log_b a^x } = b^{x \log_b a} \hspace{20cm}$$
a, b>0, x∈R
bをeにした物です。
テイラー展開
底eの指数関数
exの値はテイラー展開より求まります。
$${e}^x=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{x^n}{n!} \hspace{20cm} $$
$$\, \quad =1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\frac{x^4}{4!}+\frac{x^5}{5!}+\cdots \hspace{20cm}$$
xの範囲
\( |x| < \infty \)
剰余項
$$ \frac{e^{\theta x}}{n!}x^n \hspace{20cm} $$
底eの対数関数
ln(a)の値も同様に求まります。
$$ \ln \left( \frac{1+x}{1-x} \right) = \sum_{n=0}^\infty \frac{2}{2n+1} x^{2n+1} \hspace{20cm}$$
$$ \quad\quad\quad\quad\quad\, = 2x +\frac{2}{3}x^3 +\frac{2}{5}x^5 +\frac{2}{7}x^7 +\cdots \hspace{20cm} $$
xの範囲
\( |x| < 1 \)
引数の$$ \frac{1+x}{1-x} \hspace{20cm}$$は|x|<1の範囲ですべての正数を動きます。
誤差評価
2n+1次まで計算した際の誤差
$$ R_n = \ln \left( \frac{1+x}{1-x} \right) -\left( 2x +\frac{2}{3}x^3 +\cdots +\frac{2}{2n+1}x^{2n+1} \right) \hspace{20cm}$$
はおよそ
$$ 0 \leq R_n < \frac{1}{2} \cdot \left( \frac{1}{3} \right)^{2n+3} \hspace{20cm}$$
で評価されます。
計算例できる物の例
ルートを始めとした累乗根を計算できます。
2乗根(ルート)
$$ \sqrt{2} = 2^{1/2} = e^{(1/2) \ln 2} = \exp\left[\frac{1}{2} \ln 2 \right] \hspace{20cm}$$
3乗根
$$ \sqrt[3]{2} = 2^{1/3} = e^{(1/3) \ln 2} = \exp\left[\frac{1}{3} \ln 2 \right] \hspace{20cm}$$
n乗根
$$ \sqrt[n]{2} = 2^{1/n} = e^{(1/n) \ln 2} = \exp\left[\frac{1}{n} \ln 2 \right] \hspace{20cm}$$
有理数乗
$$ 3^{5/4} = e^{(5/4) \ln 3} = \exp\left[\frac{5}{4} \ln 3 \right] \hspace{20cm}$$
無理数乗
$$ 6^{\sqrt{7} } = e^{\sqrt{7} \ln 6} = \exp\left[\sqrt{7} \, \ln 6 \right] \hspace{20cm}$$
任意のaxの値を求められます。
誤差評価
求める際にテイラー展開を2回使うので
誤差がどのようになるか調べてみましょう。
テイラー展開により求めたln(a)の近似値をα、
真の値との誤差をε1
$$ \ln a = \alpha +\epsilon_1\hspace{20cm} $$
exp[xα]の近似値(すなわちaxの近似値)をβ、
真の値との誤差をε2
$$ \exp[x \alpha ] = \beta +\epsilon_2 \hspace{20cm}$$
とします。
$$ \exp[x \ln a ] = \exp[x (\alpha +\epsilon_1) ]\hspace{20cm}$$
$$\quad\quad\quad\quad\,\,\,\, = e^{x \alpha} \cdot e^{x \epsilon_1} = (\beta +\epsilon_2) \cdot e^{x \epsilon_1} \hspace{20cm}$$
であり
$$ \epsilon = e^{\theta x \epsilon_1} x \epsilon_1 \quad (0<\exists \theta<1)\hspace{20cm} $$
とおいて(一次の剰余項)
$$ =(\beta +\epsilon_2) \cdot (1 +\epsilon ) =\beta +\beta \epsilon +\epsilon_2 +\epsilon_2 \epsilon\hspace{20cm} $$
となります。
axの近似値として計算されたβの誤差は
$$ \beta \epsilon +\epsilon_2 +\epsilon_2 \epsilon\hspace{20cm} $$
です。
また十分小さなε1について
$$ e^{\theta x \epsilon_1} \fallingdotseq 1, \quad \epsilon_2 \epsilon \ll \epsilon_2 \hspace{20cm}$$
と見做すなら
$$\beta x \epsilon_1 +\epsilon_2 \hspace{20cm}$$
のように簡略化されます。
底eの指数関数の誤差ε2に
対数関数の誤差ε1のβx倍を足した程度の誤差に
なっている事がわかりました。
まとめ
底aの指数関数の値は
指数関数の底の変換公式および
底eの指数関数、対数関数のテイラー展開より求まります。
累乗根を始めとして任意のaxを計算できるので
実用上とても大切です。