
多次元ヤコビ行列式(ヤコビアン)
の定義と重積分の変数変換の定理です。
1~3次元の具体例を添えて、
イメージを掴める記事を目指しました。
目次[開く]
ヤコビ行列式の定義
ΩとDをRnの有界な領域とする。
Ωの元(u1, ..., un)を、
Dの元(x1, ..., xn)に写す全単射な写像Φ
Φ:Ω→D
(u1,⋯,un)↦(x1,⋯,xn)
がΩ上で定義されたC1級(1回微分可能な)関数Xi
xi=Xi(u1,⋯,un)i∈{1,2,⋯,n}
により与えられている時、
ヤコビ行列式J(u1, ..., un)は次で定義される。
n次元ヤコビ行列式
J(u1,⋯,un):=det[∂X1∂u1⋯∂X1∂un∂X2∂u1⋯∂X2∂un⋮⋮∂Xn∂u1⋯∂Xn∂un]
ヤコビ行列式には変数を明示する
J(u1,⋯,un)=∂(x1,⋯,xn)∂(u1,⋯,un)
という書き方もあります。
多重積分の変数変換
定義が済んだので、
ヤコビ行列式を応用した
実用上とても大事な
多重積分の変数変換の定理
を2段階に分けて述べたいと思います。
定理の前半
任意のΩの元(u1, ..., un)に対して
J(u1,⋯,un)≠0
を仮定する。
n次元体積確定な集合Ω1が
¯Ω1⊂Ω
を満たすなら、
D1=Φ(Ω1)もn次元体積確定。
その体積|D1|は
変換後の体積の公式
|D1|=∫⋯∫Ω1|J(u1,⋯,un)|du1⋯dun
により求まる。
体積(面積)確定とは?
大雑把に言うと積分で体積が定まる事です。
数学の世界には積分で上手く体積が計算されない
奇妙な集合もあるので、それらを取り除きます。
予備知識
1次元の体積は長さ、2次元の体積は面積です。
定理の後半
またD1上のn重積分可能な関数f(x1, ..., xn)に対し、
F(u1,⋯,un):=f(X1(u1,⋯,un),⋯,Xn(u1,⋯,un))
はΩ1上でn重積分可能であり
多重積分の変数変換
∫⋯∫D1f(x1,⋯,xn)dx1⋯dxn
=∫⋯∫Ω1F(u1,⋯,un)|J(u1,⋯,un)|du1⋯dun
が成り立つ。
変数変換の具体例
1次元
1次元の時、定理は高校数学で習う置換積分法に対応します。
定積分の置換積分法
微分可能な関数x=g(t)が
{a=g(α)b=g(β)
を満たすなら、
∫baf(x)dx=∫βαf(g(t))g′(t)dt
この場合のヤコビ行列式は
J(t)=det[∂g(t)∂t]=g′(t)
よりg'(t)なので
g′(t)≠0
を仮定して
∫baf(x)dx=∫βαf(g(t))|g′(t)|dt
となります。
g'(t)に絶対値が付いたり、
定理を使うための条件が
複雑なため置換積分法で十分です。
ポイント
高校数学の定理の方が優れている事もあります。
2次元
半径aの開円板
Da:={(x,y)|x2+y2<a2}
の上で連続(ゆえに積分可能)な関数f(x,y)
の二重積分は極座標変換
Φ:(0,∞)×[0,2π)→R2∖{(0,0)}
(r,θ)↦(x,y)
{x=rcosθy=rsinθ
を用いて
∬Daf(x,y)dxdy=∫2π0∫a0f(rcosθ,rsinθ)rdrdθ
となります。
証明
定理の仮定を満たすよう工夫します。
b>aをとり
Ω:=(0,b)×(0,2π)
とする。
Φの定義域をΩに制限した写像
Φ′:Ω→Φ(Ω)
(r,θ)↦(x,y)
{x=rcosθy=rsinθ
は有界な領域ΩとD=Φ(Ω)の間の全単射。
Ω1:=(ϵ,a)×(ϵ,2π−ϵ)
とおけば
¯Ω1⊂(0,b)×(0,2π)
ヤコビ行列式は
J(r,θ)=det[∂∂rrcosθ∂∂θrcosθ∂∂rrsinθ∂∂θrsinθ]
=det[cosθ−rsinθsinθrcosθ]
=r(cos2θ+sin2θ)
=r
の様に計算され、(0, b)×(0, 2π)において
r≠0
なので定理の仮定が満たされた。
D1=Φ'(Ω1)について
∬D1f(x,y)dxdy=∫2π−ϵ0+ϵ∫aϵf(rcosθ,rsinθ)rdrdθ
であり両辺のε→0の極限をとれば
∬Daf(x,y)dxdy=∫2π0∫a0f(rcosθ,rsinθ)rdrdθ
3次元
半径aの開球
Ba:={(x,y,z)|x2+y2+z2<a2}
の上で連続(ゆえに積分可能)な関数f(x,y,z)
の三重積分は極座標変換
Φ:(0,∞)×(0,π)×[0,2π)→R3∖{(0,0,z)|z∈R}
(r,θ,ϕ)↦(x,y,z)
{z=rcosθx=rsinθcosϕy=rsinθsinϕ
を用いて
F(r,θ,ϕ):=f(rsinθcosϕ,rsinθsinϕ,rcosθ)
とおいた時
∭Baf(x,y,z)dxdydz=∫2π0∫π0∫a0F(r,θ,ϕ)r2sinθdrdθdϕ
になります。
略証
2次元の場合と同様、
定理の仮定を満たす条件を整えて最後に極限をとる。
ヤコビ行列式J(r, θ, Φ)は
det[∂∂rrcosθ∂∂θrcosθ∂∂ϕrcosθ∂∂rrsinθcosϕ∂∂θrsinθcosϕ∂∂ϕrsinθcosϕ∂∂rrsinθsinϕ∂∂θrsinθsinϕ∂∂ϕrsinθsinϕ]
=det[cosθ−rsinθ0sinθcosϕrcosθcosϕ−rsinθsinϕsinθsinϕrcosθsinϕrsinθcosϕ]
であり、余因子展開(またはサラスの方法)より計算される。
=det[cosθ00sinθcosϕrcosθcosϕ−rsinθsinϕsinθsinϕrcosθsinϕrsinθcosϕ]
−det[−rsinθ00rcosθcosϕsinθcosϕ−rsinθsinϕrcosθsinϕsinθsinϕrsinθcosϕ]
=cosθ(r2sinθcosθcos2ϕ+r2sinθcosθsin2ϕ)
+rsinθ(rsin2θcos2ϕ+rsin2θsin2ϕ)
=r2sinθcos2θ+r2sin3θ
=r2sinθ
これは(0, ∞)×(0, π)×[0, 2π)において常に正。